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春香と千早

 
「ねぇ、千早ちゃん。女の子ってね、生まれついての嘘付きなんだよ?」

芸能活動を開始した私――アイドル、如月千早のデビュー戦たるオーディションを二週間後に控えた所為か、いつも以上に熱の篭ったダンスレッスンが終わり、更衣室で私服に着替えている私へ向かって
天海春香が伝えて来たのは、突っかかり所が今一わからないような、突拍子のないような、そんな言葉だった。

「はあ……」

ため息のような相槌を打つ私。タオルを首に掛け、首筋を伝う汗を拭く。

真新しいロッカーが三方を囲む、十畳ほどの女子更衣室にいるのは私と春香だけだった。
春香の方は学校帰りのまま直接こちらへ来たらしく、紺色のブレザー姿で更衣室の中央に置かれたパイプ椅子に逆側から腰掛け、ころころ笑っている。

……私よりも3ヶ月先にデビューし、今現在765プロの出世頭である天海春香。
人気もうなぎ上りのアイドルは、確かオフの日だったはずなのだけれど。

少し不思議に思いながら、私はゆっくりと振り返った。


       正直者がライアー
 

「春香、一体何の話?」
「んー、だから、女の子は嘘付きなんだよ、って話ー」

春香は先刻の言葉を再び繰り返した。
そう、と会話を打ち切るのは簡単なことだ。
時刻は午後六時を回り、私はいつもの白いワイシャツへ袖を通す。

「よく意味が分からないのだけれど、うそつき?」
「そ」

にこり、なんて擬音語がぴったりな笑顔で同意する春香。
笑顔として完璧と言えるその造形がひしひしと伝えてくる彼女の感情は、
『サプライズが隠されてますよー』とか、『びっくりドッキリー!』とか、そういう種類のものだ。
パイプ椅子の背もたれに腕を組みながら尚も笑顔の春香。

薄ら寒いような予感を感じながら私は再度、曖昧な相槌を返した。

「千早ちゃん」

ガタリ、と音がする。物音につられそちらを向けば、
パイプ椅子から立ち上がった春香がどこか浮ついた足取りで向かってきていた。

……後ろ手に、あきらかに、何かを隠したまま。

「それを踏まえて、これ、はいっ」

そしてぽすん、と、胸元に押し付けらた、

「……箱?」
「中身は手作りのクッキーだよ」

そう言って春香は、えへへ、と少年のような仕草で鼻っつらを掻く。

……いまいち状況がよく飲み込めない。

吐いた息はなぜか少し熱っぽかった。
私の右手に、10センチ四方の可愛らしい箱がある。

「そう言えば、春香はお菓子作りが趣味だったわね」

言い、私は手の中にある箱――春香から渡されたそれをよくよく観察してみる。
ラッピングは白く薄いレースのふりふりで、
蓋の部分はちょうちょ結びされたピンクのリボンで止めてある。
……あいかわらず、少女趣味とと言うかファンシーと言うか。


「うんっ! 実は今日、家庭科の調理実習があって、ね」


怪訝そうな色が顔に出ていたのか、春香は少しだけ恥ずかしそうに笑ってみせた。 「あ、」と一言思わず呟いた声は、解答を弾き出した思考の余韻だったのだろう。

「学校帰りに渡しに来たから、制服なの?」
「! あ、あんまり見ないで千早ちゃんっ! 恥ずかしいし……さぁ」

――女心、と言うか春香の心理は、私からしてみれば時々不明瞭だ。
制服姿を見られて恥ずかしい、とはどういうことだろう?
そう言うのであれば、むしろスクール水着とおしゃぶりでステージに立たせられる方が、などと。

「……春香、きちんと高校生なのね」

そこで思考を打ち切り、感心しきりにつぶやく私。

「あったり前だよ、今日なんか学校で数学の小テス……
 って、それどう言う意味かな千早ちゃんっ!」

反応はまるでコントのようなものだった、けれどこれが彼女の素だ。
いつも通りなやり取りに、私はごめんなさい、と返して二人で笑い合う。

首に提げていたタオルを鞄へ直しながら、春香へ問うてみる。

「これ……本当に私が貰っていいの?」
「まー、ね? うん、千早ちゃん、貰ってくれる?」
「もちろん」

素直に頷く。
にべもなく返答する。春香はそれを見、にぱっ、と笑った。

「――――……」

瞬間、夏の朝日みたいだ、と私は思う。
彼女の笑顔は、緩やかに火を齎す柔らかい太陽のようだと。
……すこし、まぶしすぎるかもしれない。私にとっては。

そんな、思い返せば気恥ずかしくなる詩的世界に浸り、惚ける私をさて置いて、
よいしょ、の掛け声とともに春香は通学鞄を肩に掛けた。
そしてやっぱりほかほかと笑いながら、こう言うのだ。


「どんな装飾にしようか一晩中悩んでなんかないよ?」


「一番出来の良いクッキーを厳選なんてしてないし、」


「今この時も心臓が爆発しそうなんて絶対ないから、安心して食べてね、千早ちゃん」


……確かにこう言った。
多分言いたいことだけ言った。
しかもあろうことか、


「感想、聞かせてほしいなんて思ってないからっ」


びしっ、と人差し指を突きつけて、くるりときびすを返したのだった。
スカートの裾をひらひら揺らし、振り返ることなく扉を開けて飛び出していく彼女。

「…………え?」

呟いた言葉は一人更衣室に取り残された私にだけ聞こえていた。

……なんだか。これは。
とても、通り魔にあったような気分だ。
さて、そこでふと、私は唐突に思い出した。それは今し方飛び出していった、春香のことで。
事実確認の為に声に出す。彼女から何回だってぼやかれた事項。


「確か、事務所から家まで2時間かかるはず……よね」

じゃあ、まさかまさか、
彼女はこの箱とあの言葉を言うためだけにここまで来たのだろうか?

「…………ふふっ」

だから私は10センチ四方の可愛らしい箱に視線を落として、
苦笑し、



「はるかの、うそつき」



と、あえて復習してみるのだった。
顔に張り付くニヤケは、まだ少しの間、取れそうにないけれど。



           了


現在6作作ってる訳ですが
春香さんの出演率100%って色々おかしいよね

冬あたりにアイマスがPSPへ移植するみたいなんで楽しみとです。
ぬるぬる動くーは期待してないよ!
だからAC版のグラ使いまわしは勘弁な!
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プロフィール

ひゃくまるP

Author:ひゃくまるP
アイマスにはまりすぎて耳汁とか色々出てる人のブログです。
基本的にアイマスの小説とか書いてうはうはしてます。
あとはニコマスの紹介とか。 夢に春香さんが出てきます。
メッセやメールは→ hyakumaru0313あっとまーくhotmail.co.jp

願わくば、全てのプロデューサーさんと握手できますよう。

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