スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

春香と女性P

00.ノックアウト

「まあ、社会構造の複雑さや如何にして我々が現在の社会を作ってきたか、なんての――理解できなくて当たり前ですよ」

貴女方女性には。

文化人の枠で番組に出演しているその人が、人好きする笑顔のまま言葉の端にはみ出させた第二のメッセージ。
敏感に感じ取って、理解して、
返す刀を持ち合わせていないことに絶望した。

「――――……」

笑いとも嘆きともつかないような曖昧な表情でカメラを見ると、
その奥の暗闇でタイムキーパーの片倉さんが五本指を丁寧に折っていくのが掠った。

――――助かった。

そう思った自分を後悔と羞恥で切り刻むよりも早く、
CMと言う形で 広い撮影スタジオのリングにタオルが投げ込まれる。


文化人の独壇場としか表現がつかないものだったけれど――コーナーが終わったのだ。


そろりと息を一つ吐いて、私は全部を切り替えるために目を瞑った。
耳の奥で、あからさまと言えばあからさまだった言外のメッセージが反響していた。じわり、と、生暖かな何かが瞼の裏で溢れるのを感じる。



ああ。これは。もう。完膚なきまで、

01.インサイドゲーム


私のプロデューサーさんは――なんというか、本物だ、と思う。


彼女は二十六歳という若さにして 超売れっ子プロデューサーまで上り詰め、三浦あずさ、水瀬伊織などの765プロダクション――ううん、芸能界を代表する数多くのアイドルたちを輩出してきた。
(パートナーとして選ばれた時、どうして私が、と凹んだことは記憶に新しいことで。)

腰まで届く長い黒髪と、少しだけ険の強い印象を受ける眼精は理知的で、いつも着ている黒スーツから取った『ブラックショルダー』なんて二つ名はいっそ笑えないレベルだ。

どんなに強大な敵や壁があったって一歩も引かないその姿勢は、女だてらに道を切り開いてきたその手腕を証明するかのようで、
私たちよりも頭一つ分高くして、追い風も向かい風も一身に受けている印象を抱かせるそもそもの原因のようでもあった。


だからこそ、なんだろうなぁって、思う。


この世界を誰よりも見渡している人だと思っているからこそ、収録が終わって、楽屋へ引っ込んでから、プロデューサーさんにいの一番に切り出したんだって。


「――議論に勝ちたいんです。それも、瞬時にとどめを刺すやり方で。」


黒い革張りのソファーに背中を預けながら、私は言った。
扉近くでスケジュール帳を開いていたプロデューサーさんが手をとめて、こちらを見る。
私の真意の、奥にある物の裏側まで
見透かさんばかりの真っ直ぐな視線だった。

私は天井を仰ぎ見て、その視線から逃げるように次の言葉を吐く。


「アイドルは顔だけの馬鹿娘なんだって、思われたくないんです」


――この世界で燻って、やっと日の目を見出した三年目。


そう、三年。


それだけの期間、揉まれて、時には干されて過ごした。
だから私はもうあの頃の私じゃない。
輝くステージに想いを馳せて、体験する全てに瞳を輝かせた天海春香はもういない。

この場所が娯楽を売る所なんだっていうのも、少なからず理解している。
番組が、スポンサーが、ディレクターがどんな言葉を欲しがっているかも解る。ただ一言を撮りたいが為に、二時間を使う世界なんだっていうのはいくらでも見てきた。

――それでも嫌だった。

望まれるよくある構図を避けたかった。
牽制でも、反撃でもない。ただ一言のとどめの刃。
いまもずっと反響しているあの言葉を振り払うべく、私はもう一度いう。


「教えてください。プロデューサーさん」


それに対するプロデューサーさんの返答は意外なものだった。


「相手にとどめを刺しちゃいけません」


――そのごもっともな意見に、私は多少なりとも失望を覚えた。
だってそれは、お母さんから小さい頃に教えられた
「喧嘩をしちゃいけません」とか「人のものを盗ってはいけません」とかの類のもので。

じゃあプロデューサーさんは、私に一生、
あの言葉、あの視線、あの悔しさを持って生きていけって言うんですか。

的外れな批判が口を突付きそうになる。ううん、なってる。
ぐっと堪えようとしても、腹の奥から競りあがってくるそれは卸しきれない。


いけない、このままじゃ、


きゅうと握り締めた拳を覆ったのは、いつのまにか私の隣に来ていたプロデューサーさんの手のひらだった。

――暖かく、柔らかい。

初めて触れ合った彼女の手は、まさに年頃の女の人のそれで。
鉄の様な、氷のようなものなのだろうと身勝手な予想していた私は、そのギャップに目を丸くさせる。
毒気と拍子を抜かれた気分だった。


プロデューサーさんは、歯を見せて笑っていた。


「だってそれは得策ではないわ。春香。
 あなたはとどめを刺すやり方じゃなく、相手を弄ぶやり方を覚えなさい」


続けられた言葉に鳥肌が立った。
欲しかった返す刀がそこにあったからだ。彼女の言葉には力がある。背骨をなぞるのは怖気の指先。
今更ながら、本物はちがうんだ、と身をもって実感する。


「議論の勝敗は本人が決めるものじゃない。決めるのは聴衆よ」


そういったあと、プロデューサーさんはもう一度笑った。
さっきまで浮かんでいた攻撃的な色合いは、影を潜めている。
奥にある物の裏側まで見透かさんばかりの真っ直ぐな視線はそのままで、瞳の奥に暖かな光が宿るのを私は確かに見た。
――それは、朝差し込む太陽の一矢のようでもあり。花も綻ぶ笑顔とはまさにといったもので。

全身の血液が沸騰して、あまつさえ顔に集中するのを感じた。

力強く握られた手から、体温が伝わってくる。
あ、とか、う、とか、解りやすく狼狽する私を見ながら、小動物のように首を傾げる彼女のギャップはエンジェルフォール級で。


「なんでこんなところで鈍いんですか、プロデューサーさん!」


的外れな批判は今度こそ口から飛び出ていた。



02.それからのこと


あの番組に出演する前に、
戦場へ赴くみたいな心境は用意しなくて大丈夫になった。


プロデューサーさんはあの日、あの楽屋で、私にたくさんの喧嘩の作法を教えてくれた。
それは個人の許容を遥かに凌駕する膨大な情報量で、私は終始めまぐるしく展開される理論と思想にぐるぐると目を回していた。

藪をつついてヘビを出した。これは嵐だ。暴力だ。そのふるまいだ。

一端ストップしてくださいと両手を翳すも、バリケードにしては貧弱すぎて押し通られる。白熱する講義は一時間にも及び、そしてプロデューサーさんはこう締めくくった。


「忘れなさい」


は。


「はぇぇええ!!?」


一拍置いて間抜けな声が出た私を一体誰が責められるだろう。
波のようにうねる私の発声を聞いて、私の隣に陣取っているプロデューサーさんはカラカラと上機嫌に笑う。
ソファーに腰掛け、足を組みなおした


「覚えてたものこそ、春香にとって本当に必要なものよ」


――実を言えば、嬉々として言葉を振りかざすプロデューサーさんを、私はそれだけをずっと見ていたから何も覚えていないのであって。


「プロデューサー、さん……」
「なぁに、春香」


もしかして、それも見透かしてるんですか。


ジト目になったのは、仕方がないことだと思う。


03.ゲームセット


とどのつまり、肩肘を張らなくても良いと教えてもらったことになる。


――初のニュース番組(そういうにはしかし、いささかバラエティーの色が強いけれど)への出演。
それもにぎやかし要員としてではなく、コメンテーターとして。
勝手な責務を感じていたのは事実だ。
いつのまにか、全身の筋肉がビキビキに固まっていたんだ。

使わないでいいところを使って、空回りしていたのは私。
それをほぐしてくれたのは、紛れもなくプロデューサーさん。


やんわりと口角を上げ、妙に晴れ晴れとした思いでパーソナリティーの言葉に耳を傾ける。
マイクが振られ、私はいかにも困った、というような表情を作ってから言い切った。


「わからないです」


説明していただけますか、と返すと、粟を食った様な顔をして、途端にしどろもどろに言葉を捜し始める文化人の姿はなんだかとてもおかしかった。


04.ノックアウト


収録が終わって、まっさきに駆け寄ったのは彼女の元だった。


「プロデューサーさん!」


出入り口の付近に設置された飲食スペースで、
紙コップ片手にお茶を飲んでいた彼女がこちらを見た。
向けられたそれは、いつもの射抜くようなものだったけれど
引き下がるような真似はもうしない。

おつかれさまでした、の声が怒号のように飛び交う中、プロデューサーさんが「春香」と三度口を動かすのが見えた。
それだけでもう、私は嬉しくなってしまう。
配線コードとガムテープの線が入り乱れている暗い足物に気をつけながら私はそちらに向かうけれど高揚感からか早足になってしまって、

「春香っ! 気をつけないと転、」
「ああああああ!!!!?」

しまった。とぎゅうと瞑った目。衝撃はいつくるだろうと身を固くさせるけれども
お決まりのドンガラはなく、代わりに柔らかで暖かな腕だった。

「こら」
「わっ」

こつん、と額に拳骨が当たった。
ううう……ごめんなさいぃ……と情けない声を上げる私。
スタジオにまたかぁという笑い声がいくつも響いて、身が縮まった。


「ねぇ春香」


声がして、そっちを見るとプロデューサーさんが朗々と笑っている。


「そんなに力を入れなくてもいいのよ」


まあ、万が一転んでも受け止めてあげるけれどね。


続けられた言葉と笑顔に当てられる。
また赤面するのを感じながら、幾ばくか余裕のあった思考は、最初から全部お見通しだと言われたのだと理解した。


言葉の端にはみ出させた第二のメッセージ。


ああ。これは。もう。完膚なきまで、


                 了


・自分の女性P(超売れっ子あたり)像。
・男性Pはランク上がる事になんだか平常運転の時情けなくなっていく分、女性Pはランク上がる事に武装するからなんかかっちょいい人になるといいなという。
・この後春香さんがPに心酔して千早さんがやきもちとかやけばいい
・身勝手な話ではありましたがここまでよんでくださって感謝です
スポンサーサイト

trackback


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

-

管理人の承認後に表示されます

comment

Secret

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです
プロフィール

ひゃくまるP

Author:ひゃくまるP
アイマスにはまりすぎて耳汁とか色々出てる人のブログです。
基本的にアイマスの小説とか書いてうはうはしてます。
あとはニコマスの紹介とか。 夢に春香さんが出てきます。
メッセやメールは→ hyakumaru0313あっとまーくhotmail.co.jp

願わくば、全てのプロデューサーさんと握手できますよう。

最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
最新記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。